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 CONCEPT

■Chapter 1

ジオサイケ (geometric × psychedelic):

整然としたサイケデリックアートを描く理由

私は始めから”サイケデリックな絵を描きたい”という考えのもと制作を始めたわけではなく、模様ばかり描いていくうちにだんだんと絵柄が細かくなり、様々な「面」ができる事で多くの色を使った方が面白そうだという思いつきから、現在のサイケデリックアート調の作品が生まれました。 

 

見た目の派手さや面白さを追求した結果ですが、制作をする一つの目的として常にあるのは、”想像できる限りの非現実的なビジュアルを、秩序ある構成・構図にして絵画として具現化すること”です。

現実離れした世界・想像上の世界を描くことで、サイケデリックアートの概念でもある精神世界の表現を踏襲しているつもりです。

またそれにプラス、幾何学模様を多く取り入れることで、整然とした・無秩序を連想させない雰囲気の作品に仕上げることも重要な要素としています。

 

サイケデリックアートは、サイケデリクス(日本語で覚醒剤)を使用したことで見る映像や感覚の具現化で、おそらく一般的に良いイメージの少ないものですが、そういう文化について学んでいくうち、海外の医療現場でサイケデリクスが精神病患者や末期癌患者の思考に良い兆候をもたらす事例が多くある事を知りました(勿論専門家立ち会いの元での事例)。 

 

私は子供時代に親が鬱病を患っていたという過去があり、現実に絶望し自死に捉われる人間の怖さを間近で見てきました。

あまりにも辛そうで周りの人間にも負の感情を植え付けるその病気が非常に怖く、本人は今は回復していますが、一種のトラウマとしてその日々の記憶が今でも鮮烈に残っています。

なので、そんなに苦しんで生きるくらいなら世の中もっと現実逃避を当たり前にしても良い社会にならないかと常々感じています。

ただ、そういう事だけを無責任に発信すると、だったら秩序のないフリーダムな環境でサイケデリクスにどっぷり浸かった日々が良いのか?といえば、そういうことではないです。

なぜなら、現実を見つめることは人によっては非常に苦しいことですが、実際生きていかなければならないのは実際今居る現実だからです。

また、その現実と対をなすように存在するのが想像上の世界や空想の世界であり、簡単に言えばサイケデリクスは、まだ自覚していない自分の想像力を開花させ、現実世界では到底目にすること・体感することのできない世界を見せてくれるものでもあります。

それが実際、精神を病んでしまった患者の脳には現状を打破できる唯一の方法にもなっており、サイケ文化で言う”精神世界の旅”をすることで現実世界と新たな気持ちで向き合うきっかけをくれるのです。

​きっかけこそ好きに描いていただけでしたが、壊れてしまった秩序(恙無く暮らす人生)を取り戻すための手段:サイケデリクスという側面を尊重したいという思いから、秩序のある整然としたサイケデリックアートをもっと描こうと考えるようになりました。

 

私にとって絵を描くことは、今でこそサイケデリクス・サイケデリック文化のイメージをアートの面からも少しずつ変えていきたいというビジョンがありますが、そもそもは子供時代にたまたまハマった趣味であり、親が自死に囚われるという辛い現実から目を逸らすための手段でもありました。

そうやって自分自身の理解も深まっていったのは、サイケデリック調の作品を描き始め、サイケデリクスのポジティブな部分を知ったことで親の過去の病気を思い返すきっかけともなったからです。

もともとは”模様を細かく描くことが楽しい”というだけでしたが、これら一連のことから、今は非現実的な想像上の世界を整然と描く作風=ジオサイケ(geometric × psychedelic)を独自に作りました。

 

一般的にサイケデリクスは現実逃避のための手段というイメージが強く、未経験の身では到底想像の域を超えませんが、現実世界では決して出会えない光景に出会えるというサイケデリクスがもっと良い使われ方をするようになれば、もっと多くの助かる命もあるという研究者の努力を少しでも伝えていけるきっかけ・踏み台になれればと考えています。

そしてアートは、リスクを冒さず様々な世界を魅せる事のできる手段でもあり、また人の想像力が具現化された作品は一つの現実でもあり、物質主義の現実とは一線を画した世界観を誰でも手軽に体感できる存在でもあります。

サイケデリクスとは全く違う手法ではありますが、これも一つの踏み台となって、日本の、大きくいえば世界のサイケデリクスに対する見方・接し方が変わっていくことを願って、日々制作を続けています。

 

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■Chapter 2

 

Geometric art:単純=美

私の絵のスタートは線でひたすら模様を描くことでした。

今でも模様がベースであることは変わらず日々​描き続けていますが、描くという作業に没頭するあまり、プラス(付け足す作業)をしていく事が多いです。

そして絵柄がどんどん細かくなっていき、描く事に執着しすぎて客観的に作品が見れていないのかも知れないと、手が止まった時期がありました。

​その時、自身が絵を描くきっかけとなった幾何学模様の基である「線」と「図形」のシンプルな美しさに改めて気付かされ、単純の中にある何かを描いてみようと思ったのが"Geometric art”を制作し始めたきっかけです。

派手で細かい絵柄の作品を描く反動で生まれました。

昨今、便利な世の中になるにつれ、人一人が取り込む情報量も日々増え続けていると感じます。

便利になる一方で、多くの情報に囲まれ複雑化する日常には流石に疲れも感じてしまいます。


日々絵の制作を続けるなかで気が付いたのは、単純に思えることの中に安心さや穏やかさがあるということ。

幾何学模様は単純な線と図形の組み合わせで成り立ちます。
こういったシンプルな線や図形にこそ、美しさや安心感、そして面白さがあることを絵画やデザインを通して表現し伝えていければと思い、制作しています。

●Geometric art series 「The room」

 

正方形や長方形のキャンバス枠を一つの部屋と見立て、図形を敷き詰めた作品です。

決められた枠の中で自由に図形を配置することが部屋の模様替えやインテリアを選ぶ感覚に近く、同じような図形を使っても置き方次第で見え方に変化が生まれます。

それが「The room」の由来で、制作を始めた2020年は

COVID-19 パンデミックにより部屋に閉じこもる事が多くなった時分でもあります。 いつもの空間=部屋を少しでもポップに明るくという前向きな気持ちも込めて、

様々な色を使用し描いています。

●Geometric art series 「Lines intertwined」

 

ケルト紋様からインスピレーションを得て制作しています。

もとはそれぞれ単調なただの線であったモノが、それらを絡み合わせる事で

一つの大きな模様を描き出す様を表現しました。

人間社会も似たような構造であると考えています。

人もそれぞれ一人では小さい存在であっても、家庭や会社・組織として

大きな一つの目的を持つ事でそれぞれが各々の場所で役割を持ち、

離れて見ると一つの大きな存在となります。

また、同じ線を左右対称や円状に繰り返す事で模様が描き出せることも、

毎日が同じ事の繰り返しでも、離れて見れば一人の人間の立派な一生となり

模様を描くのと人の生活というものはよく似ていると考えながら制作しています。

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